この投稿はフィクションです、実在する団体や人物とは何の相関もございません。


とある大学の話。そこに海外ポスドクから助教に着任した人物がいた。その助教が着任した後、およそ一年ちょっとの間に、その学科で助教公募が4回行われた。なんと、そのうち2つが該当者なしで再公募。残りの1つは外国人。1人は学位を取りたての人が着任するようです。


その学科の助教は、今年度で6人が栄転などなどで抜ける。来年は助教が3人少ない状況で運営される。


自分は助教のポジションを探すのに結構苦労して、ついに見つけたいいポジションだったと思ったのに、同僚として着任する人は2-3報の専門ジャーナルを持ってるだけで、教授との研究がマッチングしてるという理由で選ばれることが多いようだ。そんな彼らを同僚として迎えるのは、サイエンスの神様に背く行為な気がする過激理学原理主義組織に属する元スイスポスドクなのであった。


日本人の優秀な若者はもう助教を目指していないのかもしれない。もしくは、その応募している研究内容がマッチしないから応募を避けているのかもしれない。どちらにしても、また他の理由があろうとも、助教公募があまりうまく機能していないのは、純然たる事実として立ちはだかる。


スイスのAssistant Professor公募では、8人のものすごくよい候補たち(JACS、Angewなどが複数あるのは当たり前、自分のやりたいサイエンスをしっかり持っている)がその座を争ってオープンな場でプレゼンを行っていた。もちろん独立PIなので研究内容は有機化学・無機化学などの大枠は決まってるがそれ以外は全て自由だ。


結局、助教という仕事と海外のAssistant Professorのポジションの魅力の差なんじゃないかなと思う。


自分は、今年度は結構頑張って外部資金を出しまくり4個取ってきた。結構採択率が低いものも含まれていて、かなりできすぎだと思う。総額の額面で2300万円、駆け出し助教にしてはかなりの額だと思う。しかし申請額の9割くらいしかもらえなかったうえに間接経費を大学に3割持っていかれると、その額は1500万円になってしまった。

なんか、こんなに少なかったっけ?ってなってる。久しぶりに買ったお菓子のような気持ち。研究期間の3年で割ると年額は500万円。関節経費を持ってかれるともう欲しい装置を入れられる値段では全然なくなってしまう。


スイスのボスは運営経費年額2000万円が大学から来てる。助教の私に完全裁量権のある大学からの活動経費は、7万円でございます。実は博士の大学院生が1人いることによりその教室の教授に配分される額よりも少ないらしい。

スイスの友人たちはこの額に愕然。顎が外れそうなくらい驚く顔でリアクションを毎回取ってくれる。あんまり自分のポジションを悪く言うべきじゃないが、聞かれて嘘つくのもなって感じです。


こんだけ頑張って、かつ運も良く、外部資金で海外の友人の基盤運営費分くらいを手に入れた。彼らはそれ+いろいろな外部研究費で研究をゴリゴリ進めている。安定的にこの額があればもっと色々研究の幅も広がるのにと歯痒いばかりだ。


友人の別の助教は、研究費を取ってきてもその申請の内容をさせてもらえないらしい。


厳しいって…

近年の円安+物価高でサイエンスにかかる経費は右肩上がりだ。この額+自由度じゃあ海外に比類する次世代の研究者を強力に育てられるか不安になる。


まあ、突き進むしかない、もっと資金を集めて学生が頑張れるいい研究をしよう。ただ唯一、今のところ僕にできることはそれだけなんだから。


あ。もちろんこの話はフィクションですよ。


国を思って中国人ドクターにだす補助金どうのこうのでさわぐなら、まずは外国人どうのこうのは抜きにして大学の基礎的な運営費をどうのこうのいってくださいよ。マジで。