僕は学振の3つのメジャーカテゴリーのDC、PD、海特を一回以上不採択で(悔しい)、最終的に全ての採用を勝ち取りました(嬉しい)。あまりそういう人もいないんじゃないかと思う。

また、スイス政府奨学金を英語申請で採択されたこともあるので、書く側としての経験値は若手の中でもかなりある方じゃないかと思います。


こんなマイナーBlogにきているあなたは、大方メジャーな書き方のwebサイトはチェック済みだと思いますので、ここでは一般的に言われていること以外を、化学を中心に書いていこうとおもいます。

一般的によく言われていること

A. 文章をわかりやすく

B. 図と余白をきれいに

C. 夢を語る

その通りです。

それはそうだけど。そんなんわかってるよって人へ、学振の自分の思うコツをこっそり教えちゃいます。


書き始める前に。

  1. アイデアが温まっているか。学振をゴールにしてないか  

書類の構造と審査する側の理解度から、申請する研究提案がこれまでの結果と比較し有意に上位互換で、進展する内容で提出することが有利です。博士まで行く研究が修士で既に得られた結論のほうが面白そうだとなってはいけないのです。常日頃から温めてた、こういう研究につながればいいなという方針への実現可能な最初の一歩の提案が、採択率やその後の研究者としての糧につながるでしょう。

出す前にすでに得られた結果を、逆算して意図的にこれからやるような形で申請する人がたまにいます。ストーリーの完成度もよくなるので、かなり有効で採択率も高い手法です。ですが、その後伸び悩む人をたくさん見てきました。ストラテジーとして有力でも、研究者を志す若手がとっていい行動ではないと思われます。

日常での研究の積み重ねが大事です。提出一か月前だ、ストーリー考えようというようでは、採択されても未来が明るいとは言えないかもしれません。鍛えの入った提案をしましょう。


  2.自分のこれまでの研究から着想が得られたか  

人生は短い、磁性をやっていた研究者がいきなり生化学に鞍替えして神秘を解き明かす研究提案を書いても、まずうまくいかないだろう。

学生の何もわからないうちから分野を決めてしまうのは悲しいかな日本の文化だ。博士課程からの分野、研究室の移動は常にリスクを伴い、あまりに理由なきテーマ変遷は周りに流されやすい人間のレッテルを受けかねない。

また、あまりに知られた手法を提案に用いることはかなりつまらなく写る。


書き始め

  3. とりあえず全部埋める  

ネタが決まったら、バーっと全体を埋めた仮版をできるだけ早い段階でやります。アイディアをこれまでの結果、参考文献とえられる学術的発展と実現可能性、バックアッププランを日本語を特に気にせずバーっと書き殴ります。そのラフアイディアに対してラフ図も作ります。

ここで一度だれかラフアイディアに建設的意見をくれる人がいれば見せてフィードバックをもらいます。


  4. 完成した時の論文をイメージして、飛躍や無理な提案をそぎ落とす  

このラフアイディアから将来生まれる1~3報ほどの論文を頭で思い描き、イントロや内容で査読を通過しないような論理が飛躍している部分、実験量が現実的じゃない点を洗い出し、ものすごくうまくいったとき論文に完璧に合致するような内容に構成にします。


  5. 参考文献を洗い出してストーリーに深みを  

そぎ落としてすっきりすると、味気ないものになりがちです。ぼんやりとしていたネタも具体的に言いたいことが決まってきたら、追加のスパイスを入れます。そぎおとして一つの文になった申請書の言いたいことに対して、最も懸念される失敗ルートを回避できる根拠を洗い出します。注目度の低いがよくかけている論文や総説をよく読んで、根拠を示し最後の一押し「おっこいつは他と違う」と思わせるようなひねりを加えます。これで申請書に一朝一夕では出ない深みが、かけた時間のわりに簡単に盛り込めます。

ここで解決策が見つからない場合、意外と指導教員の人がわかっていることがあるので印刷して申請書をつかんで恥ずかしがらずにディスカッションに行きましょう。


  6. 図を整えて文章とレイアウトを整える  

さて、ストーリーに会う見やすくてきれいな図を入れます。この辺のテクニックはそこら中に転がってるのでよしとします。レイアウトの目安は全部を4枚?位をモニターに表示したとき、言いたいところで区切られて余白できれいに仕切られているかと、5-10%くらいの非常に重要な文章がハイライトされているかが目安ではないかと思います。


  7. 読み返しまくる  

誤字脱字に日本はすごくうるさいです。10回は読み返して、ミスをなくして表現をよりよくしましょう。短くても伝わる文字、いらない情報は意外とバッサリ落としても大丈夫です。というかそのほうが、言いたいことがわかりやすくなります。


  8. 先生に確認し推薦書をもらう  

悲しいかな僕の先生たちは申請書をまじめに意見くれる人たちではありませんでした。かつ忙しいので、ほかのメンバーもそうですが、完成度の低いものを見ると本当に相手にしてくれません。そういう指導者を持つ人はもういつでも出せるクオリティと自分が思ってるものをラフアイディアですが。。。一度ご確認お願いします。。。といって確認してもらいましょう。

もらえた数個のコメントを直したら、推薦書をお願いして、また自分で推敲と確認を繰り返します。


  9. 提出は時間に余裕をもって  

よくあるのがログインできないとか、学内の事務締め切りに間に合わないとかで事務の人に怒られるやつです。いい大人なので、ラボ外の人との約束は出来るだけ守れるように余裕を持って行動しましょう。12-13時はお昼休みなので、大学によっては事務の職員にぶちぎれられます。お気を付けください。


  10. どうせ提案どうりにはいかない  

どうせ一生懸命書いても、思った通りにならない場合がほとんどでしょう。タイトルはぼんやりはいけませんが、外れてもリカバリーが聞く範囲で広めにしたほうが後々「報告書がタイトルと全然チゲえ!」って精神衛生をむしばまれずに済みます。


  11. 提出。お疲れさまでした、あとは祈るだけです  

柳生石舟斎『天下無双とは何か・・・か 武蔵よ 天下無双とはただの言葉じゃ』

学振の申請書のおおまかな良しあしはある、だが、どの申請書が一番かなんてものは意味がない。

祈りたくなる。。。



後輩の学振の申請書を添削してくれと言われることも多いのですが、大体落ちる申請書は見ればわかります。受かりそうなものは受かるし、微妙なラインのものはAか面接にはいきます。

なので申請書を読んだ実績のある人の本音を聞くことが重要でしょう。(落ちるだろうと思っても本人が自信満々だったので言えなかったこともある。。。)







学振:後輩のミスあるある


I 間に合わない

いいアイディアを思いつけなくて、全然筆が進まないタイプ。ずっと悩んで悪いループへ。一週間前から仕方なしに書き始めるが、すでに精神的に満身創痍でケアレスミスと面白くない妥協の何とか完成させたものを提出。夜型になりがち。散歩しがち。 大体B


II 自意識過剰

先輩や先生から、耳の痛い論理の飛躍や楽観的すぎる予測へのすでに論文事実があるうえでの指摘、たとえば「そのパラメータ変えてそこまで物性変わらないよ?など」に対して聞く耳を持たない。単純にできてもつまらない申請書や絶対不可能な提案を自信満々で書く、そのうえで、いい申請書がかけたと思い込む未熟者。提出期限前に余裕をもって提出する。 大体C


III 出さない

極たまにいる、人生を放棄している。大体不登校をへて退学する。


IV パックマン

肝となる手法やアイディアを有名ラボや有名化合物からとってくる。ハードボイルドラボでやると人権はく奪案件。大体その有名ラボだからこそ説得力があって、ノウハウがないラボで書いても印象が悪い。パクリ先が有名なところだからだれでもパクった印象は持つこととなる。自分が発見したことと同じ分野の人が発見したことを同じように尊大に語る傾向がある。 大体B


V 論文を学振に間に合わせようとしない

学振に間に合いそうな結果を、期限までに何とかまとめて論文として出したいという意思を持たぬもの。先生も忙しいので、熱意をもって論文を見てもらってくれ。。。そのうちいろいろと手が回らなくなり、結局実験の結果はいいのにお蔵入りにさせてしまう。もっと熱くなれよ。結果はあるのに。。。 大体A-B


VI 先生に書いてもらう

これは学生のミスではないですが、先生に確認してもらおうと見せた申請書が全消しになって先生の作成物として帰って来るパターン。先生によって採択率や生き残れるかは異なりますが、採否にかかわらずこのダメージは遅れてくる。ポスドクや助教に行ってテーマが思いつかなる人はこういう人が多い。そして先生が全部書いてCというのも何人も見てきました。。。笑