配属学生なし、任期4年、よく使う試薬もほとんどなしな状況での、元スイスポスドクの厳しい特任助教チャレンジ。



予想通り講座の教授たちはサポーティブで、自由にやっていいよと言われたけど、この現状でどこまでできるのか不安になっている。


日本のラボに戻ってきて、実験を開始したけどもうダメかもしれない、と思わされた。日本のラボの効率の悪さをスイスと比較していきましょうか。


試薬の管理

全ての棚に鍵がかかるように試薬が管理されています。鍵束が4個、鍵が全部で20個くらい、マジで鍵探して開けるだけでかなりの時間のロスである。

スイスは毒物すら鍵はかけてません。建物が管理区域ならば、その中で試薬に鍵をかける必要なんかないし、持ち出す誰かがいてもそいつが厳罰を喰らえばいいし、そんな悪い人がいたとするなら鍵があっても盗まれるものは盗まれます。鍵かけるのなんか日常の不要な動作を増やすだけです…


試薬関連はそれだけではない。廃液の区分がめちゃくちゃに細かい。全部で12パターンの分かれ道を辿り、廃液を決めます。一般の有機溶媒だけでも、ジクロロメタンなどのハロゲン系がたくさん含まれる高ハロ、ない一般有機(金属含有)、金属含まないもの、ハロゲンがちょびっと入ってしまった低ハロと呼ばれるもの。の四つがあります。さらに入ったもの全て書いて欲しいと言われます。いや、CASナンバーも振られていない自分の新規な化合物書いても性質わからんでしょう…?時間が…無駄に…消費されていく。


スイスではそれらの溶媒は全て有機系廃液。あとは全部水系廃液。安全上中和できない酸と塩基(シアンなど)の四つです。内容物の記載は必要ありません。

さらにスイスでは、固形の試薬廃棄物は何でもでかい10Lくらいのバケツにぶち込みます。注射器、シリカゲル、ディスポのサンプル管全部ぶちこめます。一つだけ怒られる事案は、有機溶媒をたっぷりそれに入れて捨てること。それ以外は水銀以外特に気にせずぶちこめます。


日本では、注射器は別のボックス、シリカは別の処理、TLCはシリカを剥がしてアルミのプレートとシリカに分けるために別の場所に保持。それらの特別なゴミは年に2回しか捨てる機会がないとか…

研究の強い味方となるはずの、ディスポーザブルなものの破棄手順が煩雑なんです…



ハンコ

最近保険関連の書類の申し込み書類が氏名の記入がカタカナで記入しないといけないところを漢字で書いてしまっていたので(これも意味不明…)、記入のし直しをしろと書類が返ってきて、二重線と訂正印、そしてこことここに印鑑をとものすごく細かい指示…

特に移動後の4-5月は家でも職場でも印鑑がいるため、ある日は家にあってある日は職場にあって、やたら書類制作に時間がかかります…

ハンコだって偽造なんていくらでもできるのに、試薬の納品の受け取りもハンコでお願いしますとか言われる…


もうやめにしない?この無意味な本人確認の文化。。。


ルールなので従う人たち

とある日、エバポレーターで溶媒を除去していた時、学生がその圧力まで下げると壊れるのでやめてくださいと言ってきた。全然スペック的に無理な圧力じゃないので、何で壊れるの?って聞いたら、「先生がそう言っていたので」って返ってきた。また、試薬の捨て方とか雑務をもっと効率的にしたほうがいいんじゃないかと言った時も、学生はみんな口を揃えて「ルールなので従ってください」と言ってくる。

事務仕事もそうだけど、減らさない限りルールは自然に増えていくので、手続きは無限に煩雑になる。意識して雑務に使う時間を削らなければならないのだ。


最近、会話に「ルールなので」と「場合によります」と言われるのに疲れきった。


流石に試薬がついたゴミを捨てるためにゴミ袋を安全衛生室の指定にされている袋をわざわざその安全衛生室まで出向いて買いに行くのはヤバすぎる。。。


スイスは効率が悪い部分はメンバーが話し合い、ルールの範囲内(もしくは建物の管理をしている化学棟のノンアカデミックスタッフと話し合い)で効率化するようにいつでも改善していた。


日本の意味もなくルールに従い、より良い方法にしないことに激烈なストレスを感じる。


もっと研究できる環境にしない?って学生に呼びかけても、「僕たちそんなに科学好きじゃないんで」って返ってくる。真面目に見えてクズな思想もある謎の学生たち。。。



あ、そうですか…

ガラス器具を食洗機で洗って蛇口を撚れば脱イオン水がでるスイスのラボが懐かしい。


この効率で現代で先進国と対等にやっていけるわけがない。


あと、毎回クレジットカードで払う時に一括ですかって聞くな 笑