さきがけにまつわるエトセトラ
さきがけ、この業界では知らぬ者のいない登竜門。
助教になってから、毎年さきがけを出しています。その選別に選ばれるのは結構厳しいです。
毎年、各領域採用される人が10人ほど、近年は採択率が10%を割っている。さきがけに提出した若手研究者の中で10人を倒さないと選ばれないと考えると、しょーじき無理っしょってなる。
その選考過程は、書類約6ページと面接の二段階評価で、面接にはおおよそ採用人数の二倍の人が参加する。つまり面接に呼ばれる時点で、15-20%くらいである。
研究費総額4000万円。海外ポスドク帰りの先人方がいとも簡単に獲得しているように見えるこの研究費。これがないと、講座制のボスから金銭的に独立して研究することは、30代の研究者には正直厳しい。かつ一種のお墨付きみたいに使われていて、その他のファンドで十分な研究費があっても、准教授/教授の昇進のキーパーツとして欲しいといっている人も多い。
帰国して3回出したところ、面接落ち、書類落ち、3度目の今年は面接までは行けて、この記事を書いてる時点で結果待ち。
自分の経験してわかった情報を、自分への忘備録的に記しておきましょう。
面接に行った候補者には、7月の中旬の特定の日に一斉にメールが来ます。メールがまだ来ていなくて、同じ領域に出してた誰かにメールが来たという情報が入った時点で、面接に呼ばれず書類落ちがほぼ決まりだと思います。
そのメールに10分発表、15分質疑の発表スライドを1週間以内に提出するように書いてあります。面接日まではおおよそ2週間前にすでに資料は提出します。誤字脱字等は直して良いという追加情報が来たので、提出後でも微修正をするくらいはおそらく問題ないと思われます。
面接は、zoomを使った完全オンラインになり、これが結構難しいです。面接相手のアドバイザーの先生方の表情は、小さな画面に映るだけになるので、あまり見えません。会議室を映し出す形式のカメラで、見た目が少し似ている先生が2人いると、質問してるのがどちらかわからない感じです。
そんなこんなで、自分は面接がなんか噛み合わない感じになります。自分の実力不足が悔やまれます…
なお面接の場合も同様に二、三週間後の8月下旬のとある日に領域の採用予定者に一斉にメールで連絡が来るようで、誰かに来たけど自分に来てない時点で不採択のようです。
面接不採択は結構しんどいです。厳しい書類審査を通過して1/2の選定に落ちる。正直、1回目で決めたかった。
さて、結構ここまでで長くなったけど、本題は、若手の大型研究費としてのさきがけである。
さきがけ採択!!ってなれば、万々歳!!!めでたしめでたし。という感じになるだろう。難易度的にはそうだし、日本ではこれ以上ない若手研究者である。
さてさて、海外はどうか。海外の有力な若手スタートアップグラントは、例えばERCのStarting Grantである。その額、1.5 million €/5年。 170円/€の換算で2.5億円であり、6倍ほどの予算規模である。その採択率は12%で何とさきがけより通りやすい。学位取得から10年目までのPIが出せる。
もちろん非常にコンペティティブであることは変わらないが、違いは金額。この金額は採択されれば高額装置にポスドクの雇用など潤滑に研究チームが走り出せる金額だ。さきがけは装置をある程度入れたらあとはランニングコストになる金額だろう。
ヨーロッパに必要以上に研究費を出す余裕があるわけでもないので、この額がヨーロッパで若手の有望株を成長させるのに必要な金額だと認識されているということなんだと思う。
同じ金額規模は、日本ではCRESTまで行かなければならず、もちろんその難易度も相当跳ね上がる。日本で、CRESTは若手スタートアップグラントと認識されるはずがない。
ChatGPTにStarting Grantとさきがけの化学分野の採択者の業績比較をしてもらったところ、意外にも論文数などのアウトプットはERCのトップ層が少し良い程度で大部分が重なり肉薄しているらしい。
この若手時代、さきがけを終えたあとすぐにCRESTに行くことはとてもできない。基盤Bは教授とも争う2000万円規模でさきがけよりも小さい。若手が独立して、ヨーロッパと比肩する規模で研究を進めることはとてもとても難しい。これが、自分がさきがけが取れない間ずっと感じる危機感と苦しさなのだと思う。
どうにもならいことはどうにもできない。今できることは、さきがけをとってなんとか自分の研究を大きな軌道に乗せることだけだ。
世界の友人たちと鎬を削りたい。
優秀な若手が億円規模を独立して使えるようになり、それを間近で見れば、肌で感じれば、もう一度アカデミアを目指す学生も増えるんじゃないかな?

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