日本人はランキングが大好きだと思います。


個人的な見解では、日本人は個別の評価軸を持つ事にあまり馴染みがなく、周りがどう考えるか、引いては帰属する団体を個人の評価に安易に当てはめる傾向があると思います。XX大学なのーすごい!的な奴です。


日本では大学入学試験が1番難しいので、そうなるのも当然な面もあるのですが、重要なのはその大学で何を学ぶか、その後どう言った人生を送るかだと思うのです…ですが未だに根強い一流大学からの大企業信仰。東○もシャ○プもあんな事になっているのに、依然として価値観は変わってないようです。


さて、日本の研究力の低下が指摘されて久しいのですが、メディアの根拠によく使われるのが大学ランキング。日本の大学は軒並み下がり、中国の大学が爆上がりしているという取り上げられ方です。


こんな物をありがたがってるから日本は。。。ってことで今回は大学ランキングと大学の実体をあれこれ考えてみたいと思います。


まず大学ランキング、一般的によく用いられるのはTHE(タイムズハイアーエデュケーション)とQS(イギリスの大学評価機関クアクアレリシモンズ)が一般的に知られています。


ひとまずTHE2021年の世界大学ランキングを見てみましょうか。


 36位 東京大学

 54位 京都大学

【201~250位】東北大学 【301~350位】東京工業大学 【351~400位】名古屋大学、産業医科大学、大阪大学 【401~500位】九州大学、東京医科歯科大学、筑波大学 【501~600位】藤田医科大学、北海道大学、帝京大学

以上です。


その評価基準は以下のようになるらしいです。

◇教育(教育環境) 30%
・評判調査<教育> 15%
・学生に対する教員比率 4.5%
・学士課程学生に対する博士課程学生比率 2.25%
・教員に対する博士号取得者比率 6%
・大学の総収入 2.25%

◇研究(量、収入、評判) 30%
・評判調査<研究> 18%
・研究関連収入 6%
・学術生産性 6%

◇被引用論文(研究影響力) 30%

◇国際性(教員、学生、研究) 7.5%
・外国籍留学生の割合 2.5%
・外国籍教員の割合 2.5%
・国際共同研究 2.5%

◇産業界からの収入(知の移転)2.5%


中でも大きい比重を持つものが、教育と研究の評判合わせて33%と引用論文数30%ですね。評判って。。。それってあなたの感想ですよね。笑


日本の紹介記事では教育に重きをおいているランキングらしいですが、日本の大学受験を乗り越えた人には、帝京大学が北海道大学と同等で神戸や早稲田、慶応より高いのは不思議な感じがしますよね。


帝京大学のスコアの内訳を見ると

教育15.7

研究11.0

論文引用92.3

産業界からの収入34.8

国際性20.0

となります。


なんと引用数だけで旧帝国大学と同じだけのスコアを稼いでいます。。


論文引用数を簡単に見てみましょう。引用のピークが1-3年後であるので、5年ほど前を例にしようと思います。統計とかは専門外なのであくまで個別の傾向を調べる程度です。


2015年に出版されたのTeikyo Universityの所属がついた論文の被引用数を見てみると

670報の論文で20,000回ほどの引用がされています。
引用数トップ3を見てみると



なんと3つの論文で9,000回も引用されています。おおよそ半数がこの3報の引用数になります。これらの論文、すべて同じ責任著者のLancetに掲載された症例報告のようで、帝京大学の医学部の人が入ってるのですが、著者の所属数がなんと473大学。。。著者数は数え切れないほど、どうやらこのLancetのような論文たちがCitationスコア爆上げの理由のようです。実際これらの論文に産業医科大学という失礼ながら名前も聞いたことがなかった大学も入っているし、東京医科歯科大学も入っているので、上記ランキングと強い相関があると思います。かつ他の多数の医科大学はランキングに入ってない+このリストに乗っていないため、この包括的報告論文に参加しているかいないかが大きな分かれ目になっているようです。藤田医科大学はこの論文には入っていないのですが、そういうアタリ論文に入ったんでしょうかね。こういう大規模なプロジェクト論文は、おそらく特定の大学の貢献と見る(ランキングに影響を及ぼす)のはおかしい気がします。ちなみに東大は論文リストに入っていて京都大学を含む他の旧帝国大学は入っていません。


ではでは、同じランク帯の北海道大学を見てみましょう。


種目別 北海道大学 vs 帝京魂!

教育         45.0 > 15.7

研究         41.5 > 11.0

論文引用 29.4 << 92.3

産業収入     64.6 > 34.8

国際性        41.9 > 20.0


大学の規模、公的予算規模からもみて当然の結果なのでしょうが、一つの項目以外は北海道大学の勝ちです。


とどのつまるところ論文引用数でこの差を迫られているということです。続いて同じく2015年をサンプルに論文引用データを見ていきます。


論文数は6倍近い4,200報ほど、トータルの被引用数も60,000回と流石に旧帝国大学という差になります。これでTHEランキングの差はなんで生まれるのでしょうか。
被引用数トップ3の論文を見てみましょう。


僕からしたらスゲーの一言です。ですが合計1,500くらいなので帝京と比べるとなんと6分の1程度しかありません。。。そしてトータル論文数の割に被引用数が少ないのでしょうね。論文あたりの平均を見ると北海道大学が14.77で帝京大学が30.67これは大差です。おそらく論文数と教員数が少ないけど引用数爆弾3報がある帝京の教員数あたりのアウトプット力が高く評価されているのです。
ですがこの差って本当に大学の研究力の差を正当に反映していると思いますか?
トップの大学の差を数値化するには面白い試みかもしれませんが、全部の大学に当てはめたり優劣をランク付けするのはおかしいです。
ましてや中身を見ないでランキングを報道するのもアホくさいですね。
もちろんデータを分析して大学を良くすることもできるので、THEなどの統計が無意味だと言っているのではないのです、むしろ自分でもデータにアクセスできブログを書けるので感謝感謝です。

それをランクにし、かつ鵜呑みにして自らの大学の強みや方針をこんな指針から導くのは間違っていると思います。日本は日本の基準で大学をどうしたいのか、どんな人材が育ってほしいのか真剣に考える時が来ていると思います。
長くなってしまったので、他の大学ランキングの中身はまた別の機会に見ていくとしましょう。

Web of Science もつかって少しは大学人っぽい投稿にできたかな?ではまた。
(注意)  本投稿は、帝京大学を貶める目的で書かれたわけではございません。私は杉谷選手とリアル野球版を心から応援してます。

なお画像はクラリベイト・アナリティクスのWeb of Scienceの検索結果と本文の数値はWeb of Science とTHEのデータをもとに作成しています。これらの機関の努力に感謝いたします。