娘と暮らした時間
また娘とのお別れです。スイスに戻ります。
娘ももうすぐ2歳半ですが、これまで一緒に暮らした期間はスイスにいる間の10ヶ月くらいしかありません。
悲しいことに娘の人生は父親がそばにいない日々の方がすでに長いのです。実に1/3くらいしか一緒に暮らせていません。30%の父親です。妻とは結婚してもうすぐ4年ですが、こちらも同じく10ヶ月しか一緒に暮らしたことがありません。20%の夫です。結婚する前も入れたら彼女の人生のうち5%も一緒に住んでません。はぁ…
まあ、夫婦が共働きせず、アカデミアで討ち死にしたときのセーフティを考えなければ、一緒に暮らすことはできるので、何度も言っていますがこの痛みは自己責任なんでしょう。
しかし、自分がこのど厳しい大学界隈でのキャリアを続けるために、昔の世代がやってきた「奥さん」に家事育児丸投げで専業主婦をしてもらい、そのサポートを持って四六時中研究に没頭するという古いスタイルは嫌だなーと思ってしまう。
こうして改めて書いてみると、自分たちの人生をここまで犠牲にするほど、研究は素晴らしい事だろうか?って思っちゃいますよね。もちろん仕事に打ち込むのは尊い事だし、他の人の研究や難しい競争社会で活躍する人々に敬意を払っている。でもアカデミアはその競争が過度に行きすぎてぶっ壊れていないかと思う。
例えば大谷かイチローか松井のうち1人しかメシが食えるレベルの野球選手になれないようなもんになったら、もう誰も野球に挑戦しないだろう。若手が研究費をしっかり持ち研究に集中できるポジションが全体のポジション数に対してかなり少ないのはみんな同意すると思う。そこから一歩引いて研究のお金や設備があまり潤沢でない場所ですら、競争がかなり激しい。もう難しすぎるよ研究者。
娘と空港でバイバイした。いくら手を振っても振り返してくれない。しょうがなくバイバイしてもらえず出国。その後家に帰った娘が「パパ帰っちゃった」って言ってたらしい。もしかして寂しくてバイバイしたくなかったのかもしれない。「パパまた行っちゃった」じゃなくて「パパ帰っちゃった」である。いないのが普通なのだ。すごく悲しい。もうすぐスイス滞在は終了、もうすぐ帰れるからもう一踏ん張りだ…
問題は、帰国しても、今内定をもらっている大学は娘の暮らす嫁の職場と遥か遠いところ。かつ特任助教、人によってはポスドクとルビを振る日本の悪しき制度だ。まだまだ暗闇だ。海外学振、科研費の若手研究、海外のフェローシップ、論文業績だって同世代の平均は軽く超えるはずだ。でも、先が全然見えない。学生の頃の自分が見たらぶったまげるほどの成長を遂げても、この先は全然厳しいのである。
娘と妻と一緒に暮らし妻も仕事のキャリアを繋ぎ、僕はアカデミアで研究職を続ける。
書くとそこまで難しい事はないかのように見えてた、少なくとも昔は何とかなると思ってた。この難易度が、今は痛いほどわかる。ほぼ無理ゲーだ。
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