二種類のポスドク
いかに欧米の研究室内がフラットとはいえ、そこに博士課程とポスドクとしての違いがないかと問われれば、それは僕は純然としてあると思う。プロとして、ボスの労働力をポスドクが学生よりも消費しちゃいけないと思っている。
月曜のミーティングで、中国人ポスドクのセミナーがあったんだけど、そのデータの解釈にみんなが疑問を呈していた。曰く、「このプロセスではこれが効いててこのプロセスでは別の効果が効いてる」ってデータなく自信満々で言っていたので、みんながよくついていけなかった。
みんな、なんでそうなんのかもっとデータないの?って感じになって、そしてそれに乗ってボスも「やっぱそれちょっとどうなん?」って突っ込んだ時に、そのポスドクが「昨日(日曜日じゃん)ディスカッションした時はいいって言ったやん」って謎に日曜働いてるアピールと共にボスに反発した。そこから2人で10分以上のやり取りをして、続きは2人でやろうとボスが打ち切った。
何がヤバいって、このメンバーからボコボコにされた内容でNatureChemに出そうとしてるんだから、自分を含めシニアメンバーからしたら心中穏やかじゃあない。
いやあ、マジでこんなもん通るわけないやん。。。と思ってるのは僕だけなのかもしれないけどさ。
その後17時から自分と博士課程の学生でディスカッションしようと言われてたんだけど、そのポスドクがずーっと(2時間やってたらしい)ディスカッションしてるので、部屋の外で待っていた。そしたら今日は無理だから明日にしようと、ここ最近では考えられないほどやつれたボスが出てきてちょっとびっくりしてしまった。
おそらく、ボスはボスなりに納得させようと、もっといい説明を見つけようと頑張ってたんだろうけど、いかんせんポスドクが頑固すぎてやつれきってしまったように見えた。
そのポスドクは、6ヶ月の修士論文を作成する学生の研究の面倒を見ていて、その中間発表も同じ日にあったんだけど、水を使ってない合成実験で水がついた化合物が取れたり、使ってないアセテートがついた結晶が取れたり(おそらく溶媒のアセトニトリルが加水分解体されたアセトアミド)と、どう考えてもポスドクがスーパーバイズしている修士論文学生とは思えないクオリティで、マスターの学生はやる気があって頑張ってるのに可哀想に…って感じになっている。
普段はそういうことを言わないボスも、君のせいじゃいけど、おかしい結果が多いねってコメントしていた。これはスイス風の言い方で、指導者が悪いって言う意味を多分に含んでいるようだ。
海外ラボのポスドクには大まかに二種類いる。ボスのところには、結果がまとまったり大きな方針変換が必要になるまでは行かずに、自分で軌道修正ができ、博士の学生を率先してアドバイスし、また、博士の学生に分けれるほどアイディアを出し新しい発見をする美味しいポスドク。
もうひとつは、ボスのオフィスに毎日のようにアップデートをしに行きボスからフィードバックをめちゃもらうポスドク。そう言うポスドクはアイデアをもらうことが多く、そこから派生するアイデアは生まれにくく、かつこれまでも同様にPIに疑問を解決してもらってきたので、好奇心の幅が狭く広い化学の知識があまりない。結果、後輩の指導が思うほど上手く行かない。
当然上で挙げた例を見たらわかるけど、ポスドクがボスの時間を日曜を含む毎日のように30分-1時間使うなんか正気じゃない(実際ほぼ毎日ボスの部屋でディスカッションしてる)。その時間で学生を教育するクオリティのポスドクだったらラボへの貢献は雲泥の差になる。
ポスドクが博士の学生以上にボスの時間を取っちゃあいけない気がするんだよなあ。
でも意外と出世が早かったり、いいポジションを取れるのは、後者だったりするのだから困ったもんだ。笑
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