スイスのラボに足りないもの
スイスの研究室での生活も二年を超えている。
みんな人柄がいいメンバーばかりで、効率的に研究して、休む時はしっかり休む。スイスの研究室のいいところを満喫して全体的には大満足である。
しかし、たまーに物足りなくなることがある。ボスの言うことを忠実に守って、ある程度の結果をだして企業に就職していく。そういうメンバーが9割以上なのだ。このパブリケーションが異常にいいラボなのに、10年でポスドクに進んだのは1人で、もうすぐ卒業するメンバーが2人目らしい。ボスの知名度のわりにあまりにすくない。
日本の博士課程は、化学では企業に行くことに興味がなくて、その先がド厳しいというのを覚悟してすすむものだと認識している。まぁ博士出ても優秀なら余裕で企業に就職できるけど、修士卒で行くのがまだまだメジャーななかで博士に行くメリットはあまりない気がする。
そして、博士に進む人の多くがポスドクに行く日本は、ガラパゴスなシステムのもと博士の学生の必死感がすごい。金がもらえるどころか授業料を払って長時間ラボで頑張る、まさにクレイジー。結構な割合で精神がおかしくなったり指導教員とうまくいかなくなることもあるけど、その必死さが生きてるって感じさせてくれる。
このスリリングなリスクを取る覚悟の決まった若者が少なくて物足りなくなる。おそらくアメリカやイギリスの名門トップ大学ではがりがりと鎬を削る人たちがゴロゴロいるんだろうけど、スイスの博士学生はある程度でいいや感がある。
いやあ、たまにあのクレイジーな日本の研究室のやばい空気が懐かしくなる。あの日本のひどい研究環境でよくみんな頑張ってるなあ。と海外から見ると本当に思う。この覚悟がある若手がいるうちはポジションや研究費をもっと効率的なシステムにできれば、日本の研究はあっという間にまたいい結果が出せるようになるという謎の自信がまだある。
しかしそういう若者が出なくなり始めたら、もう日本の研究力はおしまいなんだろうなあ。
スイスにいた2年で日本の研究環境はどうなってるかな?
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